机戦オープニング―定虎引皇

 どうも、melovilijuです。
 今回は、定弓に並んでよく用いられる机戦のオープニングである定虎引皇について書きます。前回触れたアイル共和国文化省広報処の話は結局書く機運を逃したためお蔵入りです。

基本

 定虎引皇とは、虎を兵の前に出した定虎からさらに皇を自陣へ引くことで作られる陣形のことで、最速だと3手目で完成させることができます(図1)。

図1

 この戦術の狙いは大きく分けて3つあり、1つ目が船により王手をかけること、2つ目が虎の効きをふさいでいた皇をどかせて相手陣の隅に圧力を掛けること、そして3つ目が皇を自陣に持ちこむことで相手が皇を使いづらくすることです。
 将を王の前に移動させるのは一見冗長に思えるかもしれませんが、船が取られることを防ぐと同時に、のちに皇が移動させられた時に即座に王が危険にさらされることをなくせる点で重要な役割を果たしています。

 定虎引皇の陣形と狙いを説明したところで、次は実戦でのオープニング例に移りましょう。今回は先手が定弓を用いてきた場合に後手が定虎引皇で応戦する場合を考えます。

オープニング例

定弓 vs. 定虎引皇

互いに最速で攻めた場合

 1.ME弓MIMU XAU虎ZAIXY 2.CI兵CE TIA将ZAU 3.MU弓MAIMAU ZO皇ZAIXAUと進んで後手が定虎引皇を完成させた盤面です(図2)。相手の弓がこちらの弓を取って自陣に切り込んできていますが、構わずに皇を引いてZAIの船の利きを開けることでZAの王を攻撃しています。

図2

 図2からZAの王が逃げられる場所はNECIのどちらかですが、CI。に逃げると巫が行ける皇処を一つ潰してしまう上に簡単に攻撃されてしまうため、相手は4.ZA王TANEとします(図3)。ZEに合駒をすることもできますが、これはZAI船ZIZEで簡単にとられてしまうため悪手です。

図3

 さて、この図3の局面を見てどう思いましたか?もし黒が不利だと直感したのであれば、あなたは実力がある机戦プレイヤーといえるでしょう。 図3からは1手で直接王に利かせられる駒がありません。定虎引皇は自分の王を守り相手の王のみを狙う陣形ですが、逆にこのように相手の王が狙えなくなると、運用が途端に難しくなります。
 MAUの弓を処理するとCIに巫が来てしまうのを防げませんし、図4のように4.…PAU巫MAUCAUとしても5.MAU弓MIAとされて相手の手駒に馬と弓がそろってしまい、兵と虎を守ることになるため勝ちの目がなくなります。

図4

定弓対策に一手使った場合―抗弓との複合

 相手の攻めを無視すると定虎引皇でも劣勢になることがわかりました。机戦の序盤戦は先手が圧倒的に強いので、ある意味当たり前の結論といえます。

 ということで、対策を取ることが必要になります。ここでは、一手で可能な対策である抗弓を用いることにします。1.ME弓MIMU XAU虎ZAIXY 2.CI兵CE CAI兵MAIMY 3.LE弓LILU TIA将ZAU 4.NE兵NI ZO皇ZAIXAUと進んだ局面を考えます(図5)。

図5

 この状況はこちら側が極めて有利になっています。相手の王は逃げ場がなく、さらにNICIの皇処も虎によって抑えられているため巫を乗せることができません。

 もちろんこれは相手が抗弓に対応できず2.CE弓CIと指してしまったことによるこちらへの主導権の移動や、引皇を読めずに4.…ZO皇ZAIXAUを許してしまったことなどの要因が大きいため、ある程度机戦に慣れたプレイヤー同士の戦いでこのような盤面に持ち込むことは実際には難しいといえます。これは任意の戦術に言えることですが、実戦ではその戦術単体で勝ちに持ち込めることは少なく、他の戦術との複合や変形によって効果を発揮するものです。机戦の戦術は手数が少ないため、常に他の戦術を組み込む余地がないかを考えつつ陣形を組み立てるのが勝利への近道といえるでしょう。

終わりに

 1年以上ぶりの机戦オープニング解説の第二弾でした。相変わらず定弓が強すぎて互いが最適手をとると定虎引皇の解説にならず、苦労しました……

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA