机戦のオープニングについて

 どうも、melovilijuです。
 今回は机戦のオープニングについて、特に先手を取られた場合相手の行動に対処する方法について書きます。

目次

机戦の基本

 ・役を作らせない
 ・駒を自由にさせない
 ・再行させない

実戦的オープニング例

 ・定弓 vs. 定弓

終わりに

机戦の基本

 駒の動きと規則を覚えて机戦を上達しようとする人が、まず初めに知るべきことが机戦三律です。これは「役を作らせない (無与為集) ・駒を自由にさせない (無与従心行) ・再行させない (無与再行)」という三つの原則で、季を通じて行動の指針となる重要なポイントです。机戦というゲームでは、序盤には無駄な手を指せるような余裕はほとんどありません。そのため、三律を意識しながら何が狙われているのか、どこを抑えればよいのか、どうすれば自分の役につながるのかなどを考えながら手を決めることが強くなるための第一歩です。

役を作らせない

 机戦は、手駒の組み合わせによって役を作りそれに従って点数が移動するゲームです。つまり、相手の得点はすなわち自分の失点ということになり、これを防ぐための最も有効な方法が役を相手に作らせないことです。

 王を取らせないのはもちろんのこと、攻め駒である弓や虎と組み合わせられる馬や、兵という守りにくい駒との組み合わせだけで役になる車・将を相手に渡さないことが重要で、戦いを通してこれを意識することで、どの駒を捨てて攻めるべきかということが次第にわかってるでしょう。この項目は、特に後手になったときに意識が必要となるもので、初めの5, 6手は常に先手の動きの意図を読むことになります。

駒を自由にさせない

 これは厳密には上で述べた「役を作らせない」に含まれてくるポイントでもありますが、机戦というゲームでは、最善手が指される場合、その手は必ずそれ以降に何かの駒をある場所へ移動させるための狙いを持っています。逆に言えば、その狙いを読んだときに次に移動させる場所へこちらの駒を利かせておけば、相手の計画は修正を迫られ、こちらが自由に動ける余地が増えることになります。

 相手の意図を盤面から読めるかという部分はある程度の経験や推論が必要となってきますが、特に序盤のうちは「攻め駒を前に出す」「王や馬を取る」「巫を皇処に乗せる」など、狙いが比較的単純で読みやすい狙いになっているものが多くあります。1手で2つ3つの狙いが同時に達成されるようなことも多々生じるため、なるべくそれらの意図を読んで妨害するための一手を考えるようにするとより強くなれるでしょう。

再行させない

 これは、相手に役を作られることが避けられない時に大切になる項目です。再行は役ができた時にゲームを終了しない代償にレートを倍にするシステムで、不利な側も役を作って逆転するチャンスが生まれると考えられていますが、実際は、再行される時点で既に役を作れるだけの駒を彼にとられているわけで、我の形勢はかなり不利になっていることがほとんどです。逆に相手は手駒に何か追加するだけで新しい役が完成する状況になっていることが多く、この点においても不利となってしまっています。

 したがって、このポイントを実践できるかは、自分の負けをどれだけ軽いものに抑えられるかということに直結します。机戦は零和でかつ二人で行うゲームですから、負けないということがそのまま勝ちに繋がります。自分の負けが見えたら、相手に与える点が大きくならない範囲での防御を放棄しての王への攻撃や相手が駒を取るのに捨てる駒をこちらの役のトリガーにするなどの手を指すことで、確実に終季させましょう。もちろん相手が気づかずに再行してくれればその時はこちらが役を作り逆転できます。

実戦的オープニング例

 ここからは、ここまで述べてきた考え方をもとにしてより実戦的な局面でどういう狙いが読み取れてどういう対処をすればいいかを紹介します。

定弓 vs. 定弓

 今回は、実戦での採用率の高い定弓に対する戦い方を扱います。定弓は、弓を前に上げて巫を皇処に乗せ、馬弓兵か王を確実に完成させようとする初心者にも狙いの理解しやすい戦術です。第一手であるMAU弓MAIMYで敵陣ににらみを利かすことで相手の駒組みを制限でき、かつ一手で済むことから牽制の意味を込めて用いられることも多いこの戦術を理解することで、序盤の戦い方を学びましょう。

図1

 これは1.ME弓MIMU MAU弓MAIMY 2.CI兵CEと進んだ定弓対定弓の基本盤面です(図1)。
 赤側のCI兵CEは次にPE巫CECIで皇処に巫を乗せ次に王や馬をとれることを目的とした一手であり、これを防げなければ相手の役が確定します。これを防ぐために、まずはCIに駒を利かせることを考える必要がありますが、これの最も簡単な実現方法は2. …MY弓CYです(図2)。

図2

 この手はCEの兵を経由して巫や車へ弓を利かせるため良い手にも見えます。しかし実はこれはあまり良くない手であり、 弓が横にずれたことで相手の弓が馬に利くようになってしまっています。赤はこの後3.MU弓MAIMIAと馬を取った後4.PE巫PIPUと巫を前に出してXUTUのどちらかへ巫を乗せますが、この段階で王か虎が取られることを既に防げません(図3) 。

図3

 弓をずらすのは最適解ではありませんでした。次に2. …TAU虎ZAIXYを考えましょう(図4)。これはMUの弓を経由して間接的にCIに利きを持たせつつ、馬の上に駒を2つ重ねた状態を保っています。そのためMY弓CYと比較すると良い手と言えそうですが、次に赤が3.MU弓MYと指すとそのあと皇処へ巫が出るのを防ぐ手段がなくなります(図5)。

図4
図5

 虎を出すのも、弓をずらすのも有効な手ではありませんでした。ここでの最適な手は、2. …MY弓MUとこちらを攻めてくる相手の弓を取ってしまうことです(図6)。

図6

 この手の良いところは4つあり、まず第一に次の手で相手の巫が皇処に出るのを防げること。次に自陣への脅威となっていた相手の弓を取り除けること。三つ目として、相手が弓に対処しなければ次の手で馬が取れる状況になること。そして最後に、これが任意の状況で達成の最も難しい戦術目標ですが、相手の手を一意に絞れるようになることです。

 最後について詳しく見ていきましょう。図6の局面において赤側が馬を取られないために、そしてこれ以上この弓による被害を起こさないためには弓を取る他ありませんが、弓のあるMUに利いている駒はMIの兵しかありません。したがって次に赤が取れる最も良い行動は3.MI兵MUとなりますが、この手は特に黒陣への脅威にはならないためこちらが主導権を握れるようになります。

 この主導権を握るというのは机戦において最も重要な要素です。相手の手の狙いを読み対応できる力は必要ですが、主導権を握っていれば相手が防ぎづらい攻めをすることに集中すればよく、守りつつ攻めを狙うよりも守りを気にしながら攻める方がずっと易しいためです。基本的に相手に一手でも駒を自由にする余裕を与えると主導権は失われてしまうため、主導権を握ったときは攻めを途切れさせないことを意識して動きを組み立てるとよいでしょう。

 相手に弓を取られた後に取るべき手は3. …黒弓CYです(図7)。一手前に取ったばかりの駒を打ってしまうのはもったいないようにも思えますが、これは皇処への巫を防ぎつつ車と巫の両方に利きを持つ強力な手です。

図7

 この状態は弓が敵陣に利きを持っている上にCAIの皇処が安全なため次に4. …CAI兵CAUとして巫を皇処に乗せることもできるため非常に有利になっています。相手の持ち駒は弓ですがこれは役の構成駒とするためにはほぼ無力といってよいため、致命的な打ち込みを見逃さないことと馬の守りに気を配ることの2つに気を配れば劣勢になる心配は薄いと言えるでしょう。

 下に図7から数手進んだ局面の例をいくつか示します(図8-1, 2)。どちらの例でも最善手が指されているわけではありませんが、それぞれ黒が何を次に狙うべきか、逆に赤は何をすればその局面への移行を防ぐことができるかなどを是非考えてみてください。また、それぞれの手の目的だけでなく何が欠点かなどを考えることも上達への近道です。

図8-1: 4.赤弓CI CY弓CI 5.CE兵CI 赤弓CY 6.黒弓CU CY弓CU 7.CI兵CU CAI兵CAUまで
図8-2: 4.赤弓CI LAU弓LAILY 5.LE弓LILU LY弓LU 6.LI兵LU XAU虎ZAIXYまで

終わりに

 今回は定弓に対して定弓で対応した場合を考えましたが、机戦には他にも激巫や腰掛け虎などの有力な戦術に加えて未だ発見されていない定石が多く存在します。これまで見出されてきたものは今回述べた注意点を一つ一つカバーすることによって発案されてきたという歴史があり、これからもおそらくその延長線上で見つかると考えられています。

 この記事を読む人々が机戦を楽しみながら上達してくださり、今後の机戦文化がさらなる発展を遂げることを願います。

この記事は 悠里・大宇宙界隈 Advent Calendar 2021 の16日目の記事です。

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